初級入門

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2023.05.24

 やましなす皆様お元気でしょうか。朝に「ウェイトコントロールソイプロテイン」なる飲み物を飲むようになって1か月。気が付くと筋肉ではなく脂肪が増えてしまい過去最高に太った男斉藤です。

 

 プロテインの所為では無いという噂もあります。

 

 という事で人生に大切なモノはリラックスです。なんの脈絡もありませんが皆様は力を抜いて生活していらっしゃいますでしょうか。

 

 私どもが生業としている美容業ですが「ヘアースタイルを整えたい」「髪を美しくしたい」という世間一般的な美容室の利用目的ではない目的をもってご来店される方がいます。

 

 中には「ゆったりとした時間を過ごしたい」という目的をお持ちの方もいらっしゃいます。

 

 そんな時間(リラックスタイム)として活用できるようになる為には当然ながら美容室内で「力を抜く」という事が大切です。

 

 我々美容師サイドでも「お客様に力を抜ける空間や雰囲気づくり」を創造する努力をする事が大前提になりますが、それらを双方が成しえる事により初めてゆったりした時間を過ごしていただけることが出来るようになります。

 

 当たり前のことを長ったらしく書きましたが、先日この春から高校生になられたばかりのメンズフレッシュなお客様が当店そして美容室に初めて御来店されました。

 

 中学を卒業するまでずっと1000円カットのサロンで散髪をしていたらしく、今日と言う(美容室に初めて行く)日を家族で楽しみにされていたそうです。

 

 期待に副えるかどうかわかりませんがカウンセリングを済ませた後、私はその方の緊張をまずは解す為に「緊張しなくていい男」である事をくらだらないトークを随所に取り入れつつアピールしました。

 

 ふとカット中にとあるお客様の事を思い出しました。

 

 当店に長年ご来店頂いている、オーキニーに美容を求めているのか単にsiriのごとく便利屋として利用しているのかわからないcairn(仮)様と言う方がいます。

 

 cairn様は私に実にフランクに接してくれているのですが、唯一シャンプー中だけは私に気を使われていらっしゃいました。

 

 毎回シャンプーの際に頭の後ろをシャワーで流すときに自ら力を入れて頭を持ち上げてくれていたのです。

 

 皆様ご存じかも知れませんが、シャンプーの際に気を使って頭をセルフパワーで持ち上げられるとシャワーの水が襟元に入り込んで服を濡らしてしまう危険性が強いので、例外なく美容師全般に非常に嫌われます。

 

 1年程前、その方に勇気を出して「ずっと言いたかったのですが頭を持ち上げてくれるのありがたいですがなるべく力を抜いて私に任せてくれるよう努力していただけますでしょうか」とやや突っ込んだお願いをしました。

 

 最初の頃は「そんなの無理」と言われていたのですが「又入ってますよ」「今日はちょっと出来ましたね」と根気よくお声をかけ続け、やがて会話さえしていれば自然に頭の力を抜いていただけるようになりました。

 

 今ではcairn様は嬉しそうにシャンプー後にタオルドライを済ませ椅子を持ち上げる際「ほら私今日も力抜けてたでしょう」と、してやったり的な笑みをこちらに向けてくるようになりました。

 

 そんな時私は意地悪でわざと気付かないふりをしているのですが、I様の人生の中で担当の美容師が一度も「力を抜いてください」とお願いしたことがなかったのかも知れませんしその行為(セルフパワー持ち上げ)が当然だと思っていらしたのでしょう。

 

 ひょっとするとそんな単純な話ではなく、頭を持ち上げる事で首の筋トレを「ながら」でされていただけかも。或いは過去に美容師に気を遣わなかったことで命を落としそうになった可能性すら残っています。

 

 なんにせよ現在はシャンプー中は力を抜く事が当たり前という認識に変わられたと私は思っております。

 

 話を戻します。

 

 高校生のお客様にとってオーキニーではなくビューティーサロンとしてのファーストコンタクト。

 

 カットを終えた私はその学生さんをシャンプー台に案内しました。(メンズの場合カットしてからシャンプーをさせて頂いています)

 

 美容師が苦手なパーカーを着ていらっしゃったのでシャンプー台でその方に、嫌味ではなく「美容師にパーカーは危険」という何故を優しく教えながら椅子を後ろに倒しました。

 

 その後お湯を出し髪全体を濡らしながら間髪入れずに説明を続けました。

 

 「えっと、この後頭の後ろのほうを持ち上げながら流していくのですが、その際若いお客様たちがよく首に力を入れて頭を持ち上げてくれるのですが、それが結構危ないことが多いんです。」

 

 そうなんですか、と答える学生さんに追加説明をしました。

 

 「痩せている体系の人だと特にお湯が背中から入っていくので、なるべく頑張って力を抜いてこちら側にゆだねる練習をする感じでお願いします。持ち上げますよいいですか。」

 

 同タイミングで首を持ち上げネープ(首筋)を流しました。

 

 「もうちょっと。おっいいですね。もっといけますよ。ダラーンと言っちゃいましょう。ナイスですね。」

 

 気分はもう全裸監督。ダイアモンド映像の〇西さんはこんな気持ちだったのか。

 

 お流しが終わり、シャンプーの時に首を持ち上げると先ほどよりも頑張って力を抜く意識を持っていらっしゃったのがわかりました。

 

 「おお素晴らしいです。あと一回持ち上げる事があるのでそん時仕上げで力抜き切っちゃいましょう。」

 

 学生さんの顔はタオルで隠されていたのではっきり見えませんでしたが、笑い声と共に返事をしてくれていたので漸くですが何となく緊張は無くなっていた気がしました。

 

 そして仕上げのお流し。少しの伸びしろは残しつつも「初級:首の力の脱力レッスン」は見事成功しました。

 

 自分が当たり前と思っている事も人によっては難しかったり嬉しかったり、それどころか知らなかったりする事ってありますよね。

 

 もしかすると待合で待たれていたお母様と家に帰られてから「あの美容師さん変な事ばかり話してきてたからもう行くのやめときよし」と話し合いをされて、オーキニーは彼の人生にとってたった一度だけの来店となってしまったかも知れませんが、きっと他の美容室では「おっこの人わかってるやん。」と思われる人生を歩んでいける事と思います。

 

 やらなきゃ良かった言わなきゃ良かった。そんな経験を散々として来た要らん事しぃの私ですが、今までの人生の中で「やっときゃ良かった言っときゃ良かった」よりかはマシという事は理解できるようになりました。

 

 という事でその学生さんが又次回ご来店された際には自分の信じた道を更に進めて今度は「中級:美容師から好かれる返事受け答えレッスン」を教授させていただきたいと思います。

 

 その学生さんがこのブログを見られることはないでしょうが担当させていただきありがとうございました。

 

 又のご来店心よりお待ちしております。

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