やましなす皆様。毎号一か所は必ず誤字やミスが載ったまま通信(オーキニー通信)を発送してしまっている男斉藤です。
バナナは抜け毛予防に効くし、祇園祭は昨年規模を縮小して開催してるっちゅうねん。ほんま詰めが甘いです。
うちの息子はトイレが大好きです。
「ウンチ」と宣言してトイレに入ると早くても10分、長い時なら1時間程出てきませんし、その事で姉弟喧嘩が大谷選手の打率位の割合で起こっています。
まあ中から自身で作詞作曲のオリジナルソングや、大好きなアニメのセリフなどが頻繁に聞こえてきているので、別におかっぱの赤い服着た女の子と会話したり、4時44分44秒に異次元に連れて行かれたりしている訳ではないので「痔にならんように気を付けや」とだけ注意している所存であります。
ある日仕事から終わって二階へ上がり、小便をしようとトイレの扉を開けた所、下半身裸の息子がカギもかけずに中で座って歌ってました。
とっつぁんお帰り。
ただいまやけどここでやり取りする会話ちゃうと思うぞ。
カギ閉めて気張れよ。そう言って出て行こうとしたのですがハッと思い興味本位で息子に聞いてみました。
なぁ。ウォシュレットいっつも使ってるか。
歌の二番を歌いなおすため油断して下を向いていた息子は私の顔を不思議そうにのぞき込みながら顔を斜めに傾けて言いました。
うぉしゅれっとて何なん
息子が生まれて暫く共同で住んでいた実家のトイレ、そして数年間住んでいた賃貸マンション。思い起こせばトイレの脇にボタンではなく本体にひねりレバーのみの様式ばかりでした。
家族4人が笑顔になる為、使っているであろうと高を括っていた我が家の「ウォシュレット付きトイレ×2台」は私の思い込みだけで不親切にも彼に対して説明不十分であり、その全てのシステム、そしてスペックさを提供できていなかったのです。
私は壁に張り付いている「おしり」「やわらか」「ビデ」と書かれたボタンを指差し、彼に向って「コレや」と簡潔に説明したのち、実戦あるのみとそのシステムを体で覚えてもらう選択をしました。
そのまま動くなよ
そう言って息子の身を案じた私は、自分が使った事がない「やわらか」ボタンを押してそのままトイレを出ました。
扉を閉め、かすかに聞こえるブゥンという音と共に少し時間が経ってから息子の声がしました。
あ”ぁぁぁぁぁぁあ”ああぁあぁぁ
初めて耳にする言葉でした。
力強くもこもった音階。漫画等で良く見た事がある「あ”」という言葉。恐らく息子も初めて口にしたであろう声。
やめてお父さん止めて
あに濁音てリアルに付けれるんや、と少し感心しながら尿意の蛇口を開く準備をしていた私は、助けを呼ぶ彼の声に
『止』ってボタン押したら止まるし
と関心薄めに答えながら一階の美容室のトイレを使おうと階段を下りようとしていたのですが、余りにも長くトイレ内から「あ”」の声が悲痛に長く聞こえてくるので階段のコーナーを曲がったあたりで二階へ引き返し、面倒ながらも息子が懇待するトイレの扉を再び開けました。
動けへんねん
父親としては失格だったと思うのですが、半べそになった息子の顔を見て何故か突然笑いがこみあげて来てしまい、スマンスマンと謝りながら「押したら止まるやんけ」と「止」ボタンではなく、使った事がない「ムーブ」というボタンを押しました。
ぎゃぁ
うぃんうぃんと聞きなれない音の合間に一定のリズムで息子の口から出る悲鳴が数秒後、私の正気を取り戻してくれ、流石にちょっと可哀想かと止まるボタンを押させてくれました。
ノズルが奥に引っ込む音がして息子が脱力した為、放水が終了したのを確認できたので何か話そうと思い私の口から出た問う言葉
気持ちよかったか
に対してうなだれたまま彼は何も答えず、首を少しもちあげ下から覗き込むように私にキツイ口調と恨めしい目つきで一言だけ声を発しました。
出ていけ
息子の私に対しての初めての感情がこもったその声を聞き、これは笑ってはいけない事態になってるな、と私は言われるがままトイレを退室しました。
「お父さん、蒼くん何かあったんか」
リビングから心配そうにお姉ちゃんが聞きに来ましたが私は彼女に「大丈夫。蒼くんはただ大人の階段一歩登り寄っただけや。」と簡単に伝えると、そのまま階段を下へ降り直しました。
あの事件が起こってから早いもので半年程過ぎようとしています。
昨晩久しぶりに、言われても鍵をかけない学習不足の息子とトイレで鉢合わせた際「おぉスマン」と言いながら扉を閉めようとして思い出し、閉まりきる前に彼に興味本位で聞いてみました。
あれからウォシュレット使ってるんけ。
そういう私の問いに対して、少しの間考え込んでから笑顔で彼はこう答えました。
刺激が欲しい時にたまぁにかな。
私は「そうかお大事に」とだけ彼に伝えて扉を閉めました。
その後、罪悪感のような黒いモヤモヤしたものが私の頭の中からしばらくの間出て行かなくなりました。
出ていけと言われた半年前の時は、全く感じなかった罪悪感を覚えながらしみじみと考えさせられました。
教育って時には失敗するものなんですね。
因みにお姉ちゃんには何か怖くて未だにウォシュレットの事を聞けずにいます。
やましなす皆様。毎号一か所は必ず誤字やミスが載ったまま通信(オーキニー通信)を発送してしまっている男斉藤です。
バナナは抜け毛予防に効くし、祇園祭は昨年規模を縮小して開催してるっちゅうねん。ほんま詰めが甘いです。
うちの息子はトイレが大好きです。
「ウンチ」と宣言してトイレに入ると早くても10分、長い時なら1時間程出てきませんし、その事で姉弟喧嘩が大谷選手の打率位の割合で起こっています。
まあ中から自身で作詞作曲のオリジナルソングや、大好きなアニメのセリフなどが頻繁に聞こえてきているので、別におかっぱの赤い服着た女の子と会話したり、4時44分44秒に異次元に連れて行かれたりしている訳ではないので「痔にならんように気を付けや」とだけ注意している所存であります。
ある日仕事から終わって二階へ上がり、小便をしようとトイレの扉を開けた所、下半身裸の息子がカギもかけずに中で座って歌ってました。
とっつぁんお帰り。
ただいまやけどここでやり取りする会話ちゃうと思うぞ。
カギ閉めて気張れよ。そう言って出て行こうとしたのですがハッと思い興味本位で息子に聞いてみました。
なぁ。ウォシュレットいっつも使ってるか。
歌の二番を歌いなおすため油断して下を向いていた息子は私の顔を不思議そうにのぞき込みながら顔を斜めに傾けて言いました。
うぉしゅれっとて何なん
息子が生まれて暫く共同で住んでいた実家のトイレ、そして数年間住んでいた賃貸マンション。思い起こせばトイレの脇にボタンではなく本体にひねりレバーのみの様式ばかりでした。
家族4人が笑顔になる為、使っているであろうと高を括っていた我が家の「ウォシュレット付きトイレ×2台」は私の思い込みだけで不親切にも彼に対して説明不十分であり、その全てのシステム、そしてスペックさを提供できていなかったのです。
私は壁に張り付いている「おしり」「やわらか」「ビデ」と書かれたボタンを指差し、彼に向って「コレや」と簡潔に説明したのち、実戦あるのみとそのシステムを体で覚えてもらう選択をしました。
そのまま動くなよ
そう言って息子の身を案じた私は、自分が使った事がない「やわらか」ボタンを押してそのままトイレを出ました。
扉を閉め、かすかに聞こえるブゥンという音と共に少し時間が経ってから息子の声がしました。
あ”ぁぁぁぁぁぁあ”ああぁあぁぁ
初めて耳にする言葉でした。
力強くもこもった音階。漫画等で良く見た事がある「あ”」という言葉。恐らく息子も初めて口にしたであろう声。
やめてお父さん止めて
あに濁音てリアルに付けれるんや、と少し感心しながら尿意の蛇口を開く準備をしていた私は、助けを呼ぶ彼の声に
『止』ってボタン押したら止まるし
と関心薄めに答えながら一階の美容室のトイレを使おうと階段を下りようとしていたのですが、余りにも長くトイレ内から「あ”」の声が悲痛に長く聞こえてくるので階段のコーナーを曲がったあたりで二階へ引き返し、面倒ながらも息子が懇待するトイレの扉を再び開けました。
動けへんねん
父親としては失格だったと思うのですが、半べそになった息子の顔を見て何故か突然笑いがこみあげて来てしまい、スマンスマンと謝りながら「押したら止まるやんけ」と「止」ボタンではなく、使った事がない「ムーブ」というボタンを押しました。
ぎゃぁ
うぃんうぃんと聞きなれない音の合間に一定のリズムで息子の口から出る悲鳴が数秒後、私の正気を取り戻してくれ、流石にちょっと可哀想かと止まるボタンを押させてくれました。
ノズルが奥に引っ込む音がして息子が脱力した為、放水が終了したのを確認できたので何か話そうと思い私の口から出た問う言葉
気持ちよかったか
に対してうなだれたまま彼は何も答えず、首を少しもちあげ下から覗き込むように私にキツイ口調と恨めしい目つきで一言だけ声を発しました。
出ていけ
息子の私に対しての初めての感情がこもったその声を聞き、これは笑ってはいけない事態になってるな、と私は言われるがままトイレを退室しました。
「お父さん、蒼くん何かあったんか」
リビングから心配そうにお姉ちゃんが聞きに来ましたが私は彼女に「大丈夫。蒼くんはただ大人の階段一歩登り寄っただけや。」と簡単に伝えると、そのまま階段を下へ降り直しました。
あの事件が起こってから早いもので半年程過ぎようとしています。
昨晩久しぶりに、言われても鍵をかけない学習不足の息子とトイレで鉢合わせた際「おぉスマン」と言いながら扉を閉めようとして思い出し、閉まりきる前に彼に興味本位で聞いてみました。
あれからウォシュレット使ってるんけ。
そういう私の問いに対して、少しの間考え込んでから笑顔で彼はこう答えました。
刺激が欲しい時にたまぁにかな。
私は「そうかお大事に」とだけ彼に伝えて扉を閉めました。
その後、罪悪感のような黒いモヤモヤしたものが私の頭の中からしばらくの間出て行かなくなりました。
出ていけと言われた半年前の時は、全く感じなかった罪悪感を覚えながらしみじみと考えさせられました。
教育って時には失敗するものなんですね。
因みにお姉ちゃんには何か怖くて未だにウォシュレットの事を聞けずにいます。