ヤバい兄弟

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2016.01.15

 やましなす皆様お元気でしょうか。

 

 お正月休みでついつい甘い父親を演じ玩具を買い与えてしまったため、息子が朝から仮面ライダーのベルトで遊びまくってしまい、四六時中頭の中で「うバッチリ見なぁぉ。うバッチリ見なぁぉ。」という声が離れなくなってしまった男斉藤です。

 

 と言う事で今年も張り切って、うバッチリ見て行きたいと思いまぁぉ。

 

 かなり遅くなりましたが、少し前のブログでも触れたように12月の中旬頃、私の実の兄と二人きりで映画を見に行きました。

 

 映画の題名は「スターウォーズ フォースの覚醒」。

 

 幼い頃は両親が共働きであった為兄弟二人っきりで遊ぶ事が多くありました。

 

 学校や幼稚園が終わってから、いつも家の玄関の前に置かれてあった信楽焼のたぬきの置物の下にある鍵で家に入り、二人で夜遅くまで留守番をしていました。

 

 兄が中学に入るころ、二人の仲は急激に悪くなり、一緒に遊ぶどころか毎日喧嘩をして泣かされていました。

 

 そんな私達兄弟が共通の趣味としてずっと持ち続けていたモノの一つとしてこの「スターウォーズ」という存在がありました。

 

 時は流れ、兄弟はふとしたことを切っ掛けに、この「スターウォーズ」という映画を見るためだけに、久しぶりに水入らずで行動を共にする事になりました。

 

 そんな運命の日の前日、てっきり車で一緒に映画館まで行くだろうと思っていた私に兄からLINEのメッセージが届きました。

 

 「明日、電車で行くか。」

 

 二人とも車持ってるのに何故わざわざ地下鉄に乗って行かないといけないの。と疑問に思いました。

 

 それ以上に40過ぎたオッサンが兄弟で横に並んで席に座るという光景が何とも思いに耐え切れません。

 

 しかもその姿勢のまま山科駅と言う誰に出会うか分からない難関を越えて行かないと行かないと言う、川口浩ですら挑まないであろう危険な行動にチャレンジする勇気はありませんでした。

 

 話を聞いて返ってきた答えは、流石わが兄というような発想でした。

 

 「スターウォーズを初日に見に来る奴は、恐らく俺らと同じような中年のオッサンが大半やと思う。しかも一人で見に来よるから絶対車が多い。昼から見に行く頃の俺らには恐らく駐車場の空きは無いと思う。」

 

 成程、車で行くのは難しそう。かと言って水曜スペシャルのような危険を冒すのも辛い。

 

 そして兄が出してきたアイデアに従う事になりました。

 

 「バイクでニケツ(二人乗り)で行こう。」

 

 兄が通勤用でいつも使っている大型のバイク(BMW)をタンデムでランデブーしてコンデルー回避。

 

 そして当日。

 

 彼は私がヘルメットを持っていない事に「ありえへん」と言いつつも自分が昔使っていたお古のハンキャップにゴーグル付のヘルメットを持って来て、バイク用の革ジャンをバッチリ着こんで家まで迎えに来てくれました。

 

 貸してもらったヘルメットはゴーグルのバンドの部分が傷んでヨボヨボになっていて顔にフィットする事無く、ドリフのコントのオチでの爆発後のカトチャンのメガネの様にずれた状態で私の顔面を守ってくれました。

 

 「中学の頃と違って体重が倍くらいになってると思うし気を付けてや」

 

 そんな私の忠告に最初は「大丈夫」と余裕を見せていた兄も途中からは「お前カーブの時もうちょっと体一緒に倒してくれ」と要求を付け出しました。

 

 昔、峠のワインディングロードをツナギ(レース用のバイクスーツ)を着てハングオン(サーキットのような走り)をしまくっていた兄の運転は、とても後ろに人を乗せているという自覚を感じさせない位に激しいギアの切り替えで、振り落とされないように踏ん張る中年のオッサンの両腕を筋肉痛に変えるのには十分過ぎる腕前でした。

 

 途中、黄レンジャーも驚くほどのカレー好きな彼の提案で京大病院の近くのカレー屋さんで昼食をとってから上映20分前に映画館Vivi二条に到着。

 

 ポップコーンはいらんやろ。という彼の言葉でとりあえず1200円もするキャラクターのマスコット付の限定スターウォーズのドリンクカップを二つ購入して中に入りました。

 

 初日だけあって映画館の中は満員。周りを見渡すと兄の予想通り中年以上老人未満のオッサン達だらけ。

 

 そしてチラホラと外人さん達が見られました。

 

 例によって「NoMore映画泥棒」のパントマイムが流されて、本編開始が近づいてくると言う緊張感が流れ始めます。

 

 この時、昔見た新宿の映画館のように「STAR WARS」のロゴが出たら間違いなくファンである観客たちが一斉に「うぉー」という歓声や拍手喝采が始まると思って身構えていた私。

 

 兄に「絶対盛り上がるし」と豪語していたのでいつでも立ち上がれるような体制をとり手荷物をひざ上から床に置き換えました。

 

 静まり返る館内。間接照明が消され辺りが暗転されました。

 

 いよいよだ。

 

 兄は一緒に盛り上がるのだろうか。

 

 横にいる兄を思いながら本当の自分をさらけ出して良いモノか、という葛藤に打ち勝とうと気持ちを高め最初の第一声を何と言おうか決めてから生唾を飲みました。

 

 そして

 

  遠い昔、遥か彼方の銀河系で・・・・

 

 来た。

 

 斜め前に座っていた外人さん達が拍手をしようと手を上に上げたのを見計らってすかさず立ち上がりました。

 

 声を発しようと力を入れると、ビックリする位の周りの無反応さにこのままだと危険だと言う事を即座に感じ取り、すかさずそのまま元の席に座りました。

 

 「お前、何やってんねん。」

 

 無情な兄の言葉に我に返り、スクワットをしただけの勘違いオッサンは「京都は乗りが悪いわ」と言い訳をしながら恥ずかしさでジュースを一気飲みしてしまいました。

 

 映画は毎分毎秒、スターウォーズファンを魅了するのに十分過ぎる内容で最高のモノでした。

 

 途中途中で、周りにいる外人さん達が「HaHaHa」と和訳だと何も面白くないシーンで爆笑しているので、なんとなく一緒に笑っていました。

 

 しばらくして兄もつられて笑っている様子が分かりました。

 

 とあるシーンでショックなシーンがあり外人さん達が「oh~~~」と声を高らめた時、私たち兄弟も日本人なのに何故か「オー」と声をコッソリ漏らしました。

 

 映画が終わり恐ろしく長いクレジットが流れ、終わりと同時に即座に席を立つ兄弟二人。

 

 映画の感想。二人の口から出た言葉は「ヤバい」「僕もヤバい」でした。

 

 オシッコ漏れる。

 

 二人とも寒空の中バイクで体が冷え、カレー屋さんで水分を取りすぎ、映画が長すぎた所為同じ姿勢でトイレまで走りました。

 

 私の32秒に対し彼は1分3秒だったので、彼の方が我慢していたようでした。

 

 終わってから「家族にお土産かわなあかん」と言い訳をし合った二人の手には、どう見ても子供用や女性用のアイテムなど一切なく、実にたくさんのスターウォーズグッズが抱えられていました。

 

 その後バイクにまたがる迄何故か無言だった二人。

 

 バイクで走行中最初の信号で、なんとなく私がヘルメット越しに最初の言葉を口にしました。

 

 「ヤバいな。」

 

 待っていたと言わんばかりに彼の口から出た言葉。

 

 「ヤバいで。」

 

 そしてそれから何故か信号で止まる度にどちらともなく「ほんまヤバかったな」「いやヤバすぎやろ今回」と声を発しました。

 

 走行中、私の頭の中では映画のパイロットのように前方を走る車を見るたびに撃ち落としたくなるような妄想を抱いてました。

 

 見間違いかも知れませんが、前を覗くと運転する兄の手の指もミサイルボタンを押しているかの如く、ピコンピコンと動いてました。

 

 家について送ってくれた彼を見送る私。

 

 充実感からか何故か少し祭りの後のように寂しくなりました。

 

 そして思いました。

 

 やっぱり兄弟なんだなぁ、と。

 

 時を超えて、兄弟と言う有難い関係をもう一度気付かせてくれた映画スターウォーズ。

 

 まだご覧になられてない方がいらっしゃるかも知れませんが、これだけは言わせて頂きます。

 

 スターウォーズ超面白いですから是非観に行ってください。

 

 勿論オシッコをしっかり済ませてから。

 

 今年も皆様フォースと共にあらんことを。

 

 ブログ開始早々長々と失礼いたしました。

 

 

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