でもぉサントワマミー

はてなブックマーク
2023.07.26

 やましなす皆様いかがお過ごしでしょうか。妻と付き合ってから初めて顔合わせに行った長野の実家で何故かカラオケに連れて行かれ、お義父さんの歌う「東京砂漠」にハモリで下パートを寄せて歌ってしまったお陰で、帰省する度にお義父さんにカラオケに誘われるようになった男斉藤です。

 

 私は20代の頃カラオケが趣味でした。

 

 東京で働いていた頃、仕事納めの週末は結構な確率で誰かしらからカラオケのお誘いを受け、「歌手なりきり衣装セット」をリュックに常備して松田聖子様やカールスモーキー石井、将又欧陽菲菲などの衣装に着替え歌っていたところ、いつの間にか会社では美容の腕を買われるより宴会部長としての需要だけが独り歩きしてしまった苦い過去があります。

 

 そういえば飲んだ後のカラオケって上手かろうが下手であろうが、そして誰が歌っていたであろうが「最後に歌っていた歌」がいつまでも耳に残ってしまう現象がありますよね。

 

 私の場合、同期入社した「殿下」というあだ名の老け顔の五反田支店長に上り詰めた男が、いつも最後に「サントワマミー」と言う歌を〆で歌っていたので今でもその曲を聴くと、若い頃慣れないのに頑張って飲んでいた薄いカルーアミルクの味を思い出し苦いビールが飲みたくなります。

 

 最近ほぼ毎日、早朝にウォーキング&ストレッチをしているのですが、どちらかと言えば健康のための「歩く」という行為よりも勉強のための「聞く」に重きを置いてモチベーションを保っています。

 

 皆様は「オーディブル」というサービスをご存じでしょうか。

 

 オーディブルとは通販大手のAmazonがサービスの一環として行っている「定額料金で本を読み放題で読める(耳から聞ける)サブスクリプション」のスマホのアプリの事です。

 

 最近中々自分の時間が確保できず且ついざ読もうとしても目が疲れていて読む気力が失われてしまい、興味があり購入していた本が溜まる一方になってしまったので「ながら」ができるこのサービスを利用する事になったのですが、とても充実した時間を過ごせるようになりました。

 

 最初の頃は普通の文庫本を聞いていましたが、今では何故か自己啓発的な作品を多く聴くようになっています。

 

 その中で脳科学について解説している作品がありそこで「脳には最後に見た(聞いた)ものを強い記憶としてとどまらせる親近効果」というものと、聞いたもので暗示にかかる「プラシーボ効果」。イメージを実際に行動として伝達する「ミラー細胞」というものがあるという解説をしていました。

 

 なんか難しそうな話になりそうなので分かり易く言うと、要は「カラオケで『残り10分になりますので』という連絡が入ってから最後にチョイスした歌が楽しい歌だったなら皆楽しい気分でお開きができて、その後の人生もハッピーになる」という事らしいです。

 

 ですので24時間テレビでZARDさんの「負けないで」が流れて応援したくなってしまうのもそのなんちゃら効果や細胞の働きのお陰。つまり一緒にカラオケに来ていた誰かを明日から頑張れ、と励ましたいのであれば「明日があるさ」や「上を向いて歩こう」を最後の曲で歌ってあげると実際に効果がでるという事になります。

 

 人によってはライザップのブーッップ、ブーッップ、チャラッチャッチャチャラッチャッチャ~という音楽が流れると何となく食欲を我慢したくなる人がいるかもしれませんので、相方や恋人が最近太り気味だと心配するのであれば、そのテーマソングを口ずさみながら食事を作ってあげたり、酒のツマミにチータラを食べている横で何気なく口ずさんであげるのも効果があるかも知れません。

 

 お開きの前にサントワマミーばかり聞かされていた私ですが、今になってやっと当時何故か寮やマンションに帰ってから人恋しくなっていた理由が漸く理解できた気がします。

 

 そして勿論この効果は「歌」だけでなく「言葉」でも同じ事が言えるのです。

 

 お気づきの方もいるかも知れませんが、ここ一か月程私はこの効果を意識して接客するようになりました。

 

 近頃皆様ご来店の際に「あっつう(暑ぅ)」や「今日も暑いね」と開口一番に発せられる方が少なくありません。

 

 そんな時意識的に「でも○○地方みたいに豪雨の影響も受けてなくて良かったですね」「でもなんか京都の夏が久びりに戻ってきた感じがして良かったですね」と無理くりに「でも(でもぉと言ってます)」を付けてから会話を進めたりなんかしちゃったりなんかしています。

 

 そうすると確実に皆様お顔が少しほっこりした感じになられます。

 

 もしかするとその事で不快な思いにさせてしまった方もいるかもしれませんが、私たち「サービス業」は技術職としての美容業だけでなくいかにお帰りの際に「来てよかった」と思われたのかが大切な気がしていますので、意識する事はとても重要だと感じています。

 

 先日、友人と二人で飲みに行った際この「でもぉ」を楽しみながら使ってみたら結構お手軽に会話が通常以上に楽しくなり、何気ない妻との日常会話も楽になりました。(一方的になった気がしてます)

 

 昨日息子が夏休みの自由研究の課題に苦しみ途中途中で挫折しながらもなんとか作品を完成させ、横になりながら「なんでこんなの毎年やらなあかんの。5時間も疲れたし最後捨てるだけやん」と言って寝ようとしてたので「でもぉ」と口にして続きの言葉を促しました。

 

 「でもぉ・・・うーん。でもこれで自由研究終わったし気持ち楽になった。あと、結構あっという間やったから面白かったんやと思うわ。」

 

 息子はそう感想を口にしてから「おやすみ」と気持ちよさそうに眠りについていました。

 

 意味を持たすのは簡単で、どうせ変わらない想い出であれば〆は全て楽しいものにした方が豊かになりそうです。

 

 という事で25年程昔。私の同期の殿下が最後に歌っていた「サントワマミー」に意味を持たすため現在思考を凝らしています。

 

 せめて当時彼が岸洋子さんか越路吹雪さんの日本語バージョンの「サントワマミー」をくちにしていたのであれば耳にしながら何となく意味を見出せていたと思うのですが、彼が歌っていたのは誰が歌っていたのかすらわからない英語バージョンのそれ。

 

 とりあえず翻訳してみました。

 

 すべてが終わってしまった。君の信頼を失ってしまった。それは分かってるけどお願いだ。チャンスをくれ。

 僕の後悔を目にしても君は知らんぷり。もちろん君は悪くないけど大目に見てくれないか僕らが生きてきた。
 喜びの名の下に僕らが無くした愛の名の下に。君がいないと。

 愛しい人よ時の流れは重く時間も日々も希望もなく沈んでいく。

 君がいないと。愛しい人よ。君がいないと。愛しい人よ
 僕はあてどなく彷徨う。僕は迷い彷徨う。暗い空の下で。

 Sans toi ma mie

 

 はい。「でもぉ」

 

 でもこうやって時が過ぎ、急なキャンセルによって空いた時間にブログで微妙なネタに出来ました。

 

 いややっぱりこんなんしかあらへんぞ殿下。

 

 ※「サントワマミー」を聴いた事がない方はどこでもいいので是非文中の「サントワマミー」をクリックして一度聴いてみてください。そして聞かされ続けた当時の私の得体の知れぬ苛立ちを共感してみてください。

 

 

 

一覧 TOP