悪夢を断ち切れ

はてなブックマーク
2020.11.06

 やましなす皆様。朝夕と日中の温度差が厳しくなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。

 

 「愛の呼吸」の継承者である男斉藤です。因みに与えるのではなく欲しがってる男であります。

 

 巷で大流行中である映画「鬼滅の刃」。皆様の中にもご興味のある方がいらっしゃる事と思います。

 

鬼滅

 

 あまりの人気に「毀滅」としか変換されない現在のIMEも間も無く「おにめつぼう」と打ち込まずとも変換される事になるでしょうね。

 

 先日私の母親が突然我が家に「鬼滅」のパンフレットの様なものを持って来てくれました。

 

 取得の経緯を尋ねると「映画を見に行ってきた」との事。

 

 かなりの映画好きではあるものの話題作であった「天気の子」「君の名は。」「おしりたんてい」等ですら1人で見に行ったことの無かった母親が何の予備知識もなく「劇場版鬼滅の刃」を見に行ったのです。

 

 映画の感想を聞いてみると「面白かったしちょっと感動した」との事でした。

 

 設定は勿論、トイレットペーパーを咥えた女の子や猪の顔の男の子の意味さえロクに解らないまま鑑賞した70前後の女性すら感動させる破壊力を持つ映画である「鬼滅の刃」やはりただモノではありません。

 

鬼滅5人

 

 それをきっかけに我が家でも妻以外の熱が高まっていきました。

 

 そしてつい先日の月曜日。私も息子と社会人になったばかりの親友の娘との3人で河原町に見に行ってきました。

 

 当日の朝、市内に出掛ける準備をしていると何やら息子が鬼滅のキャラのコスプレに着替え始めました。

 

 なにやってんねん、と尋ねると「お父さんがきがえていけと言った」と言われました。

 

 全く記憶になかったのですが、すかさず妻が後ろからため息と共に証言。それにより昨晩私が酔っぱらいながらどうせならコスプレして行けと指示したとの裏が取られました。

 

 俺はカッコいいと張り切って着替えた息子の姿を見て、迎えに行った親友の娘(以後Sちゃん)の「あおくん超かわいい」という黄色い声援にやや照れ始めた息子は、車を停めて歩き始めた三条京阪の交差点で周りの人の視線を一手に集めてしまい、恥ずかしいゲージが瞬く間にメーターを振り切ってしまったらしく

 

 「お父さん僕歩きたくない」

 

 と弱音を吐き始めました。

 

 東京にいた頃、数十年ぶりに上映された公開初日深夜のスターウォーズの映画を、どこにも着て行けずにしまっていた「ストームトルーパー」(顔だけ無し)の衣装を着て新宿ピカデリーに見に行った際、周りの人が誰もコスプレをしておらず1人で浮いてしまって感動と興奮に死にたいくらいの恥ずかしさが混ざった私の、二度と思いだしたくないあの感じを時を超えて我が息子も体験し始めていたのです。

 

 いつも外でやかましいと言われ続ける息子が一言も言葉を発しなくなりました。

 

 何となく気の毒に思えてきた私と看護が仕事の気遣い上手Sちゃんは自然とトランプ大統領のSPのように、右側を私左側をSちゃんが担当するように並列して歩き出し、出来るだけ気持ちを紛らわそうと会話を交わすよう努力し始めました。

 

 「やっぱり市内は色んな人がいるな。善逸(鬼滅のキャラクターの名前)のカッコしてても誰もきにせえへん。」

 

 「ほんまやねぇ。あおくんカッコいいけど京都の町に溶け込んでて全然目立ってへんな。」

 

 後ろの方でカシャカシャとスマホのカメラ音がするのを本人の耳に入らないよう全集中しながら周囲に気を貼る二人に守られながら黄門さまと助さん角さん御一行は、這う這うの体で映画館にたどり着きました。

 

 館内に入れさえすれば森の中の木になれると踏んでいたのですが、そこでも学生さん達に声を掛けられまくる息子にトイレで「終わったらすぐ脱いだらええしもう少しだけ踏ん張れ」と声をかける私と涙をぐっとこらえて誓う息子。

 

 そんなもはや何に頑張っているのか分からない息子に、優しいSちゃんはパンフレットと言うご褒美を、全ての発端である罪深い私は鑑賞後にポケモンセンターでぬいぐるみを一つプレゼントする約束を交わして席に着きました。

 

 満席で一番前の席まで埋まった映画館内は、私の予想に反して老人が一人で座っていたりと結構年齢層が高いのが印象的でした。

 

 私と息子は予備知識として漫画であらすじを全て知っていたのですが成程よく出来た映画でした。

 

 クライマックスに差し掛かりやたら長い涙を誘うシーンで、前の席に座っていたおばさんがグスリと鼻をすすり始めました。

 

 私たちの横の席に座っていたスーツ姿のオジサンがハンカチで目の辺りを抑えていました。

 

 その横を見るとそれ程ハマっていないと言っていたSちゃんが号泣していました。

 

 息子が私のカバンをまさぐり始めハンカチを手に取って涙を拭き始めていました。

 

 みんなめっちゃ泣いてるやん。

 

 私も同じく感動してはいたのですが、息子に与えた自らの罪の意識が余りにも大きくコスプレを脱いだ後、半そでと短パンしか用意してこなかった準備の悪さに猛省しながら新京極に子供服売り場があったかどうかという事ばかりに気をとられていました。

 

 エンドロールが流れ始め全集中して終わりの歌を聞いているSちゃんに「ごめんちょっと先に出るわ」と言いながら息子の手を取りトイレに駆け込みコスプレを脱がせ着替えさせました。

 

 出てきた息子の姿を見てトイレ前に座っていた学生さんたちが「おっもう善逸終わったの。かっこよかったのに」という声をかけてくれたのですが、色んな意味でスッキリとした表情をした息子はやり遂げた男の顔になっていました。

 

 帰り際パンフレットを購入するために売店に並んでいるとヒロインの女の子の格好をした女の子を今更ながら発見して、「(あわよくば一緒に写真をとるために)もう一回着替えるか」と提案する私に息子は

 

 「うん。死んでもいやだ」

 

 と見た事ない位鬼のように冷たい表情で答えてくれました。

 

 二人に感想を聞くと、最近少し落ち込んでいたSちゃんは映画を見てもっと精一杯頑張ろうという気持ちになったそうでした。

 

 エースバーン(ポケモン)のぬいぐるみを手にした息子は全集中してもぬぐい切れない気持ちを知る事が出来、そして煉獄さん(本映画の英雄)のように諦めない男になりたくなったそうでした。

 

20201101_134807

 

 息子よ悪夢を断ち切れ。

 

 この何とも恥ずかしそうな表情の息子をカメラに収めた私は、とりあえずお酒を飲んだ時に自分の言葉にもっと責任を持とうと思えました。

 

 そう言えばブログのカテゴリーを「レビュー」にしている割に全くレビューしていないので一応私的評価だけ最後に残しておきます。(偏見あり)

 

 劇場版 鬼滅の刃 ★★★★★★☆☆☆☆ アニメのビジュアルが綺麗で普通に面白かったです。

 

 こんな人にお勧め

 

 職場で嫌な上司がいる人・何のために頑張っているのか分からない人・鬼滅の刃の原作だいすき・流行っている物はとりあえず抑えておこう

 

 逆にお勧めできない人

 

 3密ありえない・グロテスクな映像は苦手・お酒を飲んだ時の発言に責任を持てない人

一覧 TOP