ほいっとよいっと ほいっとよいっと。
本州に向かって接近している台風26号の影響でその日は1日土砂降りでした。
肌は寒いしお腹痛いし肩と足も体力までもずっとずっと限界でした。
ほいっとよいっと。
さて今回は、先日のブログでお知らせしたオーキニー店主、斉藤が山科の御神輿に参加したときの裏バージョンの話です。
前回のブログ読んでない人は良く分からない内容なのでそちらを先に読んでください。長いです。
祭り当日、電話のアラーム、松田聖子「夏の扉」によって5時過ぎに起こされた私。
外を見ると生憎と言うか的中と言うかかなりの土砂降りの雨。
「お。これはやっぱり中止ちゃうんか。」と何故かウキウキな目覚めとなりました。
早速、神輿会長に電話を入れて「今日中止ですよね。」と勝手に決めつけて連絡したところ
「いや。一応決行しますんで取り敢えず来てください。お待ちしてますね。」え、マジでヤンの。
と、超ハイテンションな返事が返ってきました。
やむを得ず早起きしていた妻と娘に手伝ってもらい晒(さらし)を巻くのを手伝ってもらいました。
予行練習していたおかげで結構スムーズに巻けたのですが、晒の上は法被(はっぴ)のみ。下はグンゼのボクサーパンツの上に木股(きまた)と呼ばれるチャックもボタンも何もない薄っぺらい生地の短パンのみです。
妻から「風邪ひくんじゃないの」と心配されましたが、「多分、祭りの男はイナセじゃなくちゃいけないからこの格好でええんやろ。担いでるうちに温かくなんねんて。」と強がる私。
一応「準備するものチェックシート」を確認しても、どこにも「雨天時の服装」とか無かったので秋雨降る(大降り)中、薄着で出かける決心をしました。
髪型もそれなりにこだわり、この日の為に真っ赤に染めました。スタイルもイワトビペンギンのように上にギンギンに立たせてみました。
よっしゃ行ってくるわ。
神社前に到着して色々手続きを済ませながら周りの人の髪型やイナセ加減を物色する私。
受付の人に「おお斉藤さん。初めてやのに気合入ってますなぁ。」と言われてニヤケたのもつかの間の事。
何故受付の人はそんな声を私に掛けてくれたのかすぐに分かりました。
晒のみで来てる奴私以外誰もおらへんやんけ。
他の人たちは皆、法被の下は普通の厚地のTシャツや襟元のしまった暖かそうな格好で来てました。
そのうち私の友人である、牛タン屋店主のIが声を掛けてくれたのですが勿論奴もしっかり厚手のシャツを着てました。
「おおヒロミ。偉い気合い入れてるなぁ。寒ないんか。」
「アホ。お前教えてくれた時晒巻いて来いって言うてたやんけ。どないなっとんねん。」
「こんな寒いのにそれは無理やろアホやなぁ。」
・・・・
ホンマここが神社じゃなかったらバックドロップ(プロレス技)かましてる所です。もう金輪際Iとの友達付きあいの関係見直そうかと思った矢先、初心者用に「肩を傷めない為」座布団みたいな素材のチョッキをIから手渡されました。
何この背中のロゴ私への当てつけか。
その後、神社の奥に進むと紙コップが並んでいたので、何となく雰囲気で手に取ってしまった私。
まぁ手に取る前からお神酒(おみき)なのは分かっていたのですが、200ml用の紙コップの中をのぞくとナミナミと日本酒が注がれてありました。
「はい。そろそろ集合掛けますんでこっち集まり出してください」
間髪入れず神輿会副会長さんのメガホンからの声が。しかし私の手には未だナミナ位残っている日本酒が。
周りにいた祭り慣れしてそうなオジサンたちが「ほないくか」的な感じで皆、クイックイッと簡単に身体にガソリン(酒)を掘り込んでいくので私も無理やり日本酒を口の中に掘り込みました。
おえっ。
人生で初めて。朝6時から日本酒の一気飲みを体験した私。
そして、会長からの説明で有無を言わさず「背の順」に並ばされます。
背の高い人たちには一生分からない思いでしょう。低いモノたちにとってこの「背の順になれぇ」がどれほどの恥辱プレイなのか。
で、躊躇間もなく、これまた有無を言わさず神輿の担ぎ手先人に何故か選ばれた私。
この時、私の前で担いでいるおでこの狭いオッサンが又どう見ても身長160無い位なのに「俺164位やわ」とか嘘をついてくれました。
オイこらオッサン。アンタ肩どう見ても神輿から離れとるやんけ。つまり私の肩には通常より約1.65倍の重力が。
ほいっとぉ よいっとぉ
そして折角家の近くを通ると言うのに、妻は又すっとボケてくれたのか、あれだけ言ったのに偉い遠くから覗いてるだけで結局頑張ってる姿を娘に見せられませんでした。
大雨の中、掛け声とともに行進していく神輿隊。
途中から何人かの威勢の良い同い年くらいの人たちが「もうここまで来たらカッパ着てても一緒やな。皆で脱ごうやないか」と言い出しました。
冗談じゃない。
近頃の雨には放射能も溶け込んでいて有害物質も多く含まれていて頭皮に非常に悪いのを知らないのか。
なんてことも言えるわけもなく、そして何より赤いヘアマニキュアをしたての私です。雨なんかに塗れると色落ちで顔も法被もみんな真っ赤っ赤になってしまいます。髪型もキメテ来てる。あげく晒一枚で風邪ひきます。
そんな人の気も知れず「アンちゃんなんや全然カッパ脱がへんなぁ。」と声を掛けてくるタコ社長に似たオジサン。アンタなんかに桜の気持ちが分かって溜まるモノか。
御神輿は所々に休憩所が設けてあり、その都度「接待」と題したお茶菓子が出てくるのですが、ここにもこれでもか、と言うくらいの日本酒とビールが用意されていました。
僕ね。あったか~いコーヒーかコーンスープが欲しいの。
しばらく担いだりパフォーマンスをしていると、やはりと言うか酔いが体に回ってきます。
ほいっとぉよいっとぉ ほいっとぉよいっとぉ。
この掛け声ですが、オッサンたちが4~50人で言っていると、とてもじゃないですが「ほいっとよいっと」に聞こえず、一度疑い出すともう元の様には聞こえて来なくなって来るから不思議。
ほいっとぉ よいしょぉ
神輿会長のスピーカーからの出だしの掛け声もどう聞いてもよいしょぉ。
タコ社長なんか「ほいたー ライター」です。
後ろの学生さんは恐らくホットモットのお弁当が食べたかったんでしょう。
国旗の描かれた扇子を振っていたお姉さんに至ってはヨックモック、洋菓子です。
私も頑張って「ほいっとぉよいっとぉ」と言っていたつもりでしたが耳に入り出した雑言のお蔭で途中からはもう無茶苦茶。
ほいっとぉよいっとぉ さいっとぉ よいっとぉ
ほいっとぉよいっとぉ さいっとぉ 良い子ぉ
ほいっとぉよいっとぉ ほんとは 良い子ぉ
良い子なんですよ本当は。自分大好き。
しばらくして休憩所の度に飲んでいたアルコール達が膀胱内でマックスになり、非常におしっこが近くなる人達が続出。
休憩所に到着する度、観光シーズンの途中で寄ったサービスエリアの女子便所前の様に簡易便所に行列が出来ます。
始めのうちはその行列を見ても「あんたら日頃から鍛えてへんからそうなんねん。俺なんか職業柄7~8時間は余裕で我慢できるぞ」などと思いながら傍観していたのですが、そんな私にも本日最初のビッグウェーブが襲います。
お腹痛い。
恐らく寒さで冷えた上にきつめに巻いた晒と、山科団地で頂いた差し入れの「小川ベーカリー」のパンが原因か。
あの小川のソーセージパンを食べている時にソーセージの先っちょを落としてしまい、周りのおばちゃん達にイナセに見せる為3秒ルールを適用して自慢げに食べてしまったのがいけなかったか。
それからと言うもの、もうほいっとぉよいっとぉどころではありませんでした。
ほいっとぉよいっとぉ おなかぁいたいよぉ
ほいっとぉよいっとぉ ほんとにいたいよぉ
それからと言うもの私に「負」なるオーラが纏(まと)わり始めます。
又俺かつぐの。お腹が痛いから辛そうな顔してるのに俺に大目にかつがせんといてぇや。
ていうか肩痛いねん。横で歩いてるアンタら。この顔見てみ。見てぇや。
アカン。そんなに神輿振らんといてくれ。ていうかホンマに誰も助けに(交代に)来ないやんけ。
いや。そいつさっき代わりよったばっかりやっちゅうねん。コッチ。コッチずっと代わってへんて。
もう前のおでこの狭いオッサンですらドンドン身長が低くなっている様に見えてきます。
ほいっとぉよいっとぉ といれぇどこよぉ
ほいっとぉよいっとぉ やばいぃでるよぉ
ほいっとぉよいっとぉ ぷすっとぉでたよぉ
One for all. All for one.
誰か助けて。
ほいっとぉぉぉぉ よいっとぉぉぉぉぉぉ
そして要約山階南小学校付近の休憩所で便所タイムが巡って来ます。
背の順なので神輿の先頭付近に位置していた私。神輿はバックで休憩所に入って行ったので最も遠い位置に陣取ってしまい、神輿を置いた後前かがみ内股ダッシュで便所に向かいます。
トイレにはすでに6人ぐらいの列が出来ていました。しかし7人目。一人当たり30秒の計算だと約3分後にはパラダイス学園。
私の後にもすぐさま5~6人の列が出来ました。奴らには勝てたダッシュは無駄では無かった訳です。
しかしあれあれれ。一人目がいつまでたっても出てきません。
恐らく晒や木股などを着こんでいるせいで手こずっているのでしょう。これは一人頭+15秒で再計算し直さないと。
その後、再計算は見事に裏切られおよそ一人当たり90秒程出てこない現実を突き付けられた私に本日最大の「カリフォルニアドリーム」並みのビッグウェーブが襲います。
その時の私の心境は、「映画「霊元導師」でキョンシーに目の前で睨まれ、息を止めて一寸でも動いたら食い殺される」位の一歩も動けない状態でした。
そんな中4人目の人が便所から出てきました。もう少し。
その時、4人目の人と顔見知りの人がすれ違いざまにやや腹を立てた口調で交わした会話が私を全身全霊で否定します。
「何やミソノさん長いなぁウンコしてたんちゃうか叶わんでホンマ」
「いや山田さん、糞してへんわ。そんなんみんな待ってんのにするか普通。」
しないの普通。
世の中には聞かない方が知らない方が良かった事が多くある。これは私は聞いてない。知らない知りたくない。
しかし辛いのは自分だけじゃないぞ広観。出来るだけスピーディーに事を済ませれば或いは。
そして私の前の人が便所に入った瞬間、後ろからメガホンで声がしました。
「え~そろそろ巡行再会します。そろそろよろしいですか。」
いや全く宜しくない。
こんな時タイタニックに乗っていた音楽隊なら優雅に演奏を続けるでしょうが、平民には無理。未だ難民6~7人残ってるの。
そして順番が回ってきて、平静を装いながら便所に入る私。中に入るや否や大急ぎで木股をずらそうとしました。
晒が。
さらしぃがぁ。
木股の上に晒を巻いているので木股が脱げません。というかその晒と木股の下にある紐がどうやっても外れません。
木股は、前の大事な部分にチャックもボタンもついてないので前は何とか間からパンツをずらせば出来るのですが、オケツは無理。どうやっても無理。
トイレットペーパーの芯を二個つなげてバイパスよろしく垂れ流そうかとも考えましたが、私に迷っている時間は無く、取り敢えず気を緩めて後ろがモリッと出ないようヘソ下だけに気合を入れ小便だけ出るように集中してなんとか今季ベストラップをたたき出して手も洗わず便所を後にした私。後は神任せだ。
山科の神様。
山科の神様。もし未だ斉藤広観と言う人間がこの世に必要とされているのであれば、少しでも私と言う人間が力になれる様な事があるのなら、どうか無事に神輿巡行を終わらせて下さい。そうでなければこの地と装束を汚してしまう結果に人間として落ちて行ってしまっても結構です。
心の中で本当にそう思いました。
その後、神輿に追いつき再び担ぎ始めましたが、雨と共に調子も上がって、空と心に晴れ間が出て来て、自分がまだまだ必要とされている事を知らされる結果になりました。
そして5時過ぎに神社で貸してもらった法被を返却して、息子が通っている保育園前を上半身裸に晒のみの中年男が猛ダッシュ。無事に我が家にたどり着きました。
帰ると妻と子供たちが笑顔で「お父さんお疲れ様」と迎えてくれました。
しかし私の口から出た言葉は「さらしとってぇぇrxtyyはyくとってxえr」
トイレに入ると勢いが良すぎて危うくスペースシャトルの様に空まで飛んでいくところでしたが、トイレから出ると妻と娘が「お父さん。肩が凄い事になってるよ」と言うので感傷に浸る間もなく以前ネットでみたあの映像が頭の中によみがえります。
そして恐る恐る妻に写真をとって貰いました。するとそこに衝撃の映像が。
いやスミマセン。何となく勢いで。
こうして、私の第1回目の神輿体験は終了しました。
めげずにこれからも休みが合えば毎年担いでいきたいと思います。
山科の神様、これからも宜しくお願いします。
成功とは失敗を繰り返した人にしか体験できないものである。
よし。来年はウコン飲んでカイロ貼ってアテント履いてやるぞぉ。
誰や「ウンコ飲んで」って読んだ人。
終わり
ほいっとよいっと ほいっとよいっと。
本州に向かって接近している台風26号の影響でその日は1日土砂降りでした。
ほいっとよいっと ほいっとよいっと。
肌は寒いしお腹痛いし肩と足も体力までもずっとずっと限界でした。
ほいっとよいっと。
さて今回は、先日のブログでお知らせしたオーキニー店主、斉藤が山科の御神輿に参加したときの裏バージョンの話です。
前回のブログ読んでない人は良く分からない内容なのでそちらを先に読んでください。長いです。
祭り当日、電話のアラーム、松田聖子「夏の扉」によって5時過ぎに起こされた私。
外を見ると生憎と言うか的中と言うかかなりの土砂降りの雨。
「お。これはやっぱり中止ちゃうんか。」と何故かウキウキな目覚めとなりました。
早速、神輿会長に電話を入れて「今日中止ですよね。」と勝手に決めつけて連絡したところ
「いや。一応決行しますんで取り敢えず来てください。お待ちしてますね。」え、マジでヤンの。
と、超ハイテンションな返事が返ってきました。
やむを得ず早起きしていた妻と娘に手伝ってもらい晒(さらし)を巻くのを手伝ってもらいました。
予行練習していたおかげで結構スムーズに巻けたのですが、晒の上は法被(はっぴ)のみ。下はグンゼのボクサーパンツの上に木股(きまた)と呼ばれるチャックもボタンも何もない薄っぺらい生地の短パンのみです。
妻から「風邪ひくんじゃないの」と心配されましたが、「多分、祭りの男はイナセじゃなくちゃいけないからこの格好でええんやろ。担いでるうちに温かくなんねんて。」と強がる私。
一応「準備するものチェックシート」を確認しても、どこにも「雨天時の服装」とか無かったので秋雨降る(大降り)中、薄着で出かける決心をしました。
髪型もそれなりにこだわり、この日の為に真っ赤に染めました。スタイルもイワトビペンギンのように上にギンギンに立たせてみました。
よっしゃ行ってくるわ。
神社前に到着して色々手続きを済ませながら周りの人の髪型やイナセ加減を物色する私。
受付の人に「おお斉藤さん。初めてやのに気合入ってますなぁ。」と言われてニヤケたのもつかの間の事。
何故受付の人はそんな声を私に掛けてくれたのかすぐに分かりました。
晒のみで来てる奴私以外誰もおらへんやんけ。
他の人たちは皆、法被の下は普通の厚地のTシャツや襟元のしまった暖かそうな格好で来てました。
そのうち私の友人である、牛タン屋店主のIが声を掛けてくれたのですが勿論奴もしっかり厚手のシャツを着てました。
「おおヒロミ。偉い気合い入れてるなぁ。寒ないんか。」
「アホ。お前教えてくれた時晒巻いて来いって言うてたやんけ。どないなっとんねん。」
「こんな寒いのにそれは無理やろアホやなぁ。」
・・・・
ホンマここが神社じゃなかったらバックドロップ(プロレス技)かましてる所です。もう金輪際Iとの友達付きあいの関係見直そうかと思った矢先、初心者用に「肩を傷めない為」座布団みたいな素材のチョッキをIから手渡されました。
何この背中のロゴ私への当てつけか。
その後、神社の奥に進むと紙コップが並んでいたので、何となく雰囲気で手に取ってしまった私。
まぁ手に取る前からお神酒(おみき)なのは分かっていたのですが、200ml用の紙コップの中をのぞくとナミナミと日本酒が注がれてありました。
「はい。そろそろ集合掛けますんでこっち集まり出してください」
間髪入れず神輿会副会長さんのメガホンからの声が。しかし私の手には未だナミナ位残っている日本酒が。
周りにいた祭り慣れしてそうなオジサンたちが「ほないくか」的な感じで皆、クイックイッと簡単に身体にガソリン(酒)を掘り込んでいくので私も無理やり日本酒を口の中に掘り込みました。
おえっ。
人生で初めて。朝6時から日本酒の一気飲みを体験した私。
そして、会長からの説明で有無を言わさず「背の順」に並ばされます。
背の高い人たちには一生分からない思いでしょう。低いモノたちにとってこの「背の順になれぇ」がどれほどの恥辱プレイなのか。
で、躊躇間もなく、これまた有無を言わさず神輿の担ぎ手先人に何故か選ばれた私。
この時、私の前で担いでいるおでこの狭いオッサンが又どう見ても身長160無い位なのに「俺164位やわ」とか嘘をついてくれました。
オイこらオッサン。アンタ肩どう見ても神輿から離れとるやんけ。つまり私の肩には通常より約1.65倍の重力が。
ほいっとぉ よいっとぉ
そして折角家の近くを通ると言うのに、妻は又すっとボケてくれたのか、あれだけ言ったのに偉い遠くから覗いてるだけで結局頑張ってる姿を娘に見せられませんでした。
ほいっとぉ よいっとぉ
大雨の中、掛け声とともに行進していく神輿隊。
途中から何人かの威勢の良い同い年くらいの人たちが「もうここまで来たらカッパ着てても一緒やな。皆で脱ごうやないか」と言い出しました。
冗談じゃない。
近頃の雨には放射能も溶け込んでいて有害物質も多く含まれていて頭皮に非常に悪いのを知らないのか。
なんてことも言えるわけもなく、そして何より赤いヘアマニキュアをしたての私です。雨なんかに塗れると色落ちで顔も法被もみんな真っ赤っ赤になってしまいます。髪型もキメテ来てる。あげく晒一枚で風邪ひきます。
そんな人の気も知れず「アンちゃんなんや全然カッパ脱がへんなぁ。」と声を掛けてくるタコ社長に似たオジサン。アンタなんかに桜の気持ちが分かって溜まるモノか。
ほいっとぉ よいっとぉ
御神輿は所々に休憩所が設けてあり、その都度「接待」と題したお茶菓子が出てくるのですが、ここにもこれでもか、と言うくらいの日本酒とビールが用意されていました。
僕ね。あったか~いコーヒーかコーンスープが欲しいの。
しばらく担いだりパフォーマンスをしていると、やはりと言うか酔いが体に回ってきます。
ほいっとぉよいっとぉ ほいっとぉよいっとぉ。
この掛け声ですが、オッサンたちが4~50人で言っていると、とてもじゃないですが「ほいっとよいっと」に聞こえず、一度疑い出すともう元の様には聞こえて来なくなって来るから不思議。
ほいっとぉ よいしょぉ
神輿会長のスピーカーからの出だしの掛け声もどう聞いてもよいしょぉ。
タコ社長なんか「ほいたー ライター」です。
後ろの学生さんは恐らくホットモットのお弁当が食べたかったんでしょう。
国旗の描かれた扇子を振っていたお姉さんに至ってはヨックモック、洋菓子です。
私も頑張って「ほいっとぉよいっとぉ」と言っていたつもりでしたが耳に入り出した雑言のお蔭で途中からはもう無茶苦茶。
ほいっとぉよいっとぉ さいっとぉ よいっとぉ
ほいっとぉよいっとぉ さいっとぉ 良い子ぉ
ほいっとぉよいっとぉ ほんとは 良い子ぉ
良い子なんですよ本当は。自分大好き。
しばらくして休憩所の度に飲んでいたアルコール達が膀胱内でマックスになり、非常におしっこが近くなる人達が続出。
休憩所に到着する度、観光シーズンの途中で寄ったサービスエリアの女子便所前の様に簡易便所に行列が出来ます。
始めのうちはその行列を見ても「あんたら日頃から鍛えてへんからそうなんねん。俺なんか職業柄7~8時間は余裕で我慢できるぞ」などと思いながら傍観していたのですが、そんな私にも本日最初のビッグウェーブが襲います。
お腹痛い。
恐らく寒さで冷えた上にきつめに巻いた晒と、山科団地で頂いた差し入れの「小川ベーカリー」のパンが原因か。
あの小川のソーセージパンを食べている時にソーセージの先っちょを落としてしまい、周りのおばちゃん達にイナセに見せる為3秒ルールを適用して自慢げに食べてしまったのがいけなかったか。
それからと言うもの、もうほいっとぉよいっとぉどころではありませんでした。
ほいっとぉよいっとぉ おなかぁいたいよぉ
ほいっとぉよいっとぉ ほんとにいたいよぉ
それからと言うもの私に「負」なるオーラが纏(まと)わり始めます。
又俺かつぐの。お腹が痛いから辛そうな顔してるのに俺に大目にかつがせんといてぇや。
ていうか肩痛いねん。横で歩いてるアンタら。この顔見てみ。見てぇや。
アカン。そんなに神輿振らんといてくれ。ていうかホンマに誰も助けに(交代に)来ないやんけ。
いや。そいつさっき代わりよったばっかりやっちゅうねん。コッチ。コッチずっと代わってへんて。
もう前のおでこの狭いオッサンですらドンドン身長が低くなっている様に見えてきます。
ほいっとぉよいっとぉ といれぇどこよぉ
ほいっとぉよいっとぉ やばいぃでるよぉ
ほいっとぉよいっとぉ ぷすっとぉでたよぉ
One for all. All for one.
誰か助けて。
ほいっとぉぉぉぉ よいっとぉぉぉぉぉぉ
そして要約山階南小学校付近の休憩所で便所タイムが巡って来ます。
背の順なので神輿の先頭付近に位置していた私。神輿はバックで休憩所に入って行ったので最も遠い位置に陣取ってしまい、神輿を置いた後前かがみ内股ダッシュで便所に向かいます。
トイレにはすでに6人ぐらいの列が出来ていました。しかし7人目。一人当たり30秒の計算だと約3分後にはパラダイス学園。
私の後にもすぐさま5~6人の列が出来ました。奴らには勝てたダッシュは無駄では無かった訳です。
しかしあれあれれ。一人目がいつまでたっても出てきません。
恐らく晒や木股などを着こんでいるせいで手こずっているのでしょう。これは一人頭+15秒で再計算し直さないと。
その後、再計算は見事に裏切られおよそ一人当たり90秒程出てこない現実を突き付けられた私に本日最大の「カリフォルニアドリーム」並みのビッグウェーブが襲います。
その時の私の心境は、「映画「霊元導師」でキョンシーに目の前で睨まれ、息を止めて一寸でも動いたら食い殺される」位の一歩も動けない状態でした。
そんな中4人目の人が便所から出てきました。もう少し。
その時、4人目の人と顔見知りの人がすれ違いざまにやや腹を立てた口調で交わした会話が私を全身全霊で否定します。
「何やミソノさん長いなぁウンコしてたんちゃうか叶わんでホンマ」
「いや山田さん、糞してへんわ。そんなんみんな待ってんのにするか普通。」
しないの普通。
世の中には聞かない方が知らない方が良かった事が多くある。これは私は聞いてない。知らない知りたくない。
しかし辛いのは自分だけじゃないぞ広観。出来るだけスピーディーに事を済ませれば或いは。
そして私の前の人が便所に入った瞬間、後ろからメガホンで声がしました。
「え~そろそろ巡行再会します。そろそろよろしいですか。」
いや全く宜しくない。
こんな時タイタニックに乗っていた音楽隊なら優雅に演奏を続けるでしょうが、平民には無理。未だ難民6~7人残ってるの。
そして順番が回ってきて、平静を装いながら便所に入る私。中に入るや否や大急ぎで木股をずらそうとしました。
晒が。
さらしぃがぁ。
木股の上に晒を巻いているので木股が脱げません。というかその晒と木股の下にある紐がどうやっても外れません。
木股は、前の大事な部分にチャックもボタンもついてないので前は何とか間からパンツをずらせば出来るのですが、オケツは無理。どうやっても無理。
トイレットペーパーの芯を二個つなげてバイパスよろしく垂れ流そうかとも考えましたが、私に迷っている時間は無く、取り敢えず気を緩めて後ろがモリッと出ないようヘソ下だけに気合を入れ小便だけ出るように集中してなんとか今季ベストラップをたたき出して手も洗わず便所を後にした私。後は神任せだ。
山科の神様。
山科の神様。もし未だ斉藤広観と言う人間がこの世に必要とされているのであれば、少しでも私と言う人間が力になれる様な事があるのなら、どうか無事に神輿巡行を終わらせて下さい。そうでなければこの地と装束を汚してしまう結果に人間として落ちて行ってしまっても結構です。
心の中で本当にそう思いました。
その後、神輿に追いつき再び担ぎ始めましたが、雨と共に調子も上がって、空と心に晴れ間が出て来て、自分がまだまだ必要とされている事を知らされる結果になりました。
そして5時過ぎに神社で貸してもらった法被を返却して、息子が通っている保育園前を上半身裸に晒のみの中年男が猛ダッシュ。無事に我が家にたどり着きました。
帰ると妻と子供たちが笑顔で「お父さんお疲れ様」と迎えてくれました。
しかし私の口から出た言葉は「さらしとってぇぇrxtyyはyくとってxえr」
トイレに入ると勢いが良すぎて危うくスペースシャトルの様に空まで飛んでいくところでしたが、トイレから出ると妻と娘が「お父さん。肩が凄い事になってるよ」と言うので感傷に浸る間もなく以前ネットでみたあの映像が頭の中によみがえります。
そして恐る恐る妻に写真をとって貰いました。するとそこに衝撃の映像が。
いやスミマセン。何となく勢いで。
こうして、私の第1回目の神輿体験は終了しました。
めげずにこれからも休みが合えば毎年担いでいきたいと思います。
山科の神様、これからも宜しくお願いします。
成功とは失敗を繰り返した人にしか体験できないものである。
よし。来年はウコン飲んでカイロ貼ってアテント履いてやるぞぉ。
誰や「ウンコ飲んで」って読んだ人。
終わり