じブンルール

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2019.12.12

 やましなすそして本日も山科万歳な皆様。年末に向けてお忙しくされていると思いますがいかがお過ごしでしょうか。

 

 最近、店内で流すBGMの編集をしていて、久しぶりに音楽好きになっている男斉藤です。

 

 いや割とマジで髭ダンの音楽性は素晴らしい。

 

 人間には「クセ」あるいは「こだわり」というこの世に生を受けた時点で個々に持たされてしまう自分ルールがあります。

 

 たとえば鼻をかんだティッシュペーパーをゴミ箱に捨てるのに、やや距離がある際放り投げて入らず取りに行き、そのまま捨てればいいのに又元の場所に戻って放り投げるという行為。

 

 これは遺伝子レベルで行動してしまう太古からの「今の自分を超えていこうとする人間としての正当な成長行為」です。(独自的偏見)

 

 他人からするとどうでもいいような事でも本人的には譲れない、そういった不可解な行動があります。

 

 私であれば、「五条通の東山のトンネルを車で超える際、出口にたどり着くまで息を止めてしまう」ルールや「奥歯に詰まった牛筋やネギを舌を使った吸い出しにより取れるまで言葉を発さない」ルール。

 

 これらのスイッチが入っている時は勿論舌の先からピリピリして血が出るまでは「お愛想」コールは行いませんし、トンネルミッションも納得いかない時は東山税務署へ向かう道に降りて引き返してやり直します。

 

 誰にも理解されなくても結構。これらは全て自分自身との戦い。

 

 そんな父親の遺志を継いでか、我が息子である「蒼衣」もそういったこだわりを多数持っています。

 

 朝食時、定位置にホット牛乳とヤクルトが無いとご飯を食べない。スッポンポンになると必ずトイレに行く。ポテチはリッチコンソメでなければ食べない。

 

 挙げればきりがないのですが、その殆どは周りに害はない事が多いのですが(妻は若干あり)その中で家族を苦しめる行為が一つだけあります。

 

 「トイレで大便をする際、大声で歌を歌い納得するまで出てこない」という息子ルール。

 

 時間に余裕があるときには別に勝手にやってくれて構わないルールなのですが、お出かけ前や朝のトイレ渋滞の時に始まってしまうと大変。

 

 「あおくん早く出て」というお姉ちゃんの怒りの声も何のその。出てきたら確実に泣かされるのも分かっているのに歌いきるまで出てきません。

 

 私が玄関で車のエンジンをかけて待っていて「まだか」と声をかけに行く際、家の中の妻の表情がアメリカ人の「お手上げだぜベイベー」の様な、無言で目をふさいで首を横に振る仕草で「彼がトイレの中に入った」事が察知できると、家族中が目的地到着を定時に間に合わせる事を諦めます。

 

 そんな彼が最近やっかいな歌にハマりだしました。

 

 岡崎体育「ポーズ」

 (↑知らない方は一度クリックして聴いてみて下さい)

 

 これは一昔前にポケットモンスターと言うアニメに流れていた歌ですが、私たち世代で言う所の「ドリフの早口言葉」的な歌でしょうか。

 

 兎に角終始言葉数が多すぎてかなりハイレベルな歌です。

 

 この歌の冒頭の「モンスターボールでもハイパーボールでも」と言う所が、息子的に上手に歌えることに快感を感じているようで思いだせばすぐチャレンジしています。

 

 そんな彼と先月二人で映画を見に行きました。

 

 映画がクライマックスを迎える終盤。隣で静かに映画を鑑賞していた息子が「ウンコがしたい」と言い出しました。

 

 誘導等を頼りに息子の手を引き会場を出て、トイレまでの通路を歩いているとトイレの手前にガチャガチャが数台並んでいました。

 

 ガチャガチャの一つに「ポケットモンスター」のキーホルダーがありました。

 

 そのままトイレの個室に入った彼は、いつものように全裸になっているであろうゴソゴソと服を脱ぐ音と便座を倒したガタンという音の後に何かしゃべりだしました。

 

 「オーっスみらいのチャンピオンきょうもはりきっていきましょう」

 

 途中で見たガチャガチャによって頭の中を一瞬にして岡崎体育さんに洗脳された未来のチャンピオンは、まさかのタイミングで張り切りだしてしまいました。

 

 私「えぇ蒼君、今はかんべんしくれ」

 

 プライベート空間の外からかすかに聞こえる嘆く私の声など到底届くはずもなく、ご機嫌なテンションで歌は続きます。

 

 「ゲットゲット(ゲットゲット)さあドンドンなかまをあつめちゃおう」

 

 これ終わるまで見に帰れへんのか。そう思った矢先

 

 「スパボルでもマスタボルでもマスタボルでも・・・・あ。まちがえた。」

 

 振り出しに戻り歌い直しだした彼。

 

 「おーすみらいのチャンピオンきょうもはりきっていきましょうゲットゲット」

 

 続きから歌ってくれ、とも思いましたが息子のそういうルールがいかに大切かを知ってしまっている父親でもあるのでとにかく最後まで歌いきれることを願いました。

 

 3回、4回。とにかく彼の調子は今回に限っては悪い様子。なかなか先に進みません。

 

 途中からは心の中で一緒に戦っている私が居ました。

 

 3種類のボールを全て制覇し、捕まえられない君のハートの部分を越えてくれたのですが、その後のパートの

 

 「ノーマル かくとう どく じめん ひこう むし いわ ゴースット」

 

 の部分で失敗して又ボールに逆戻り。気が付くと映画を抜け出してからかなりの時間が経過していました。

 

 兎に角いつもの感じであればあとちょっと。

 

 耳でテレビ番組の「サスケ」をみている気分でしたが、幾度とない山場を潜り抜け無事に1番を歌いきってくれた息子が笑顔でトイレから出て来ました。

 

 ウンコでたんか。と聞いたのですが途中からソレはどうでも良くなったとの返答が帰って来ました。

 

 何故か不思議な達成感と連帯感が私達親子を包み、気を付けた方がいい歌詞の注意点を通路で語りながら映画館の席に戻りました。

 

 私達が出た時には平穏だった映画内容は見てない間にどうやら急転直下したようで、主人公のコーギー犬達がお城の中で消火器をまき散らしていました。

 

 映画鑑賞後フードコートで息子と早口言葉をクリアするための秘訣について語り合っていると、息子が一風堂のラーメンを食べるのをやめ突然

 

 「ウンコしたい」

 

 と言い出しました。

 

 私は同じ艇を踏まないように、トイレまで行く道中に「岡崎体育「ポーズ」」を完璧に歌い切らせてからトイレの個室に彼を案内しました。

 

 彼がこもったトイレからは今度は

 

 「なまむぎなまごめなまたまごぉぉん なまむぎなまごめなまたまごぉぉいえぇぇぇぃ」

 

 という声が聞こえてきました。

 

 自分ルールを曲げない能力、そして教えた事を吸収する能力にたけた我が息子。

 

 私は将来彼がきっと大物になるであろう事を確信しました。

 

 

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