チャイナガール

はてなブックマーク
2016.08.10

 ヤンヤヤンヤンヤンヤンヤン ヤンヤンヤンヤンヤーン

 

 チャイナガール、チャイナガール、シンポンソンポンヌー。

 

 おはようございます。連日子供達と外に遊びに出過ぎて、いつでも「愛のメモリー」が歌いだせるくらいの雰囲気にまでサンターンしてしまった男ヒロミ松崎です。

 

 と言う事で今回は先週の営業中に私に起こった「自分と言う醜さそしてちっぽけさ」を嫌と言うほど感じさせられた事件についてお話します。

 

 先週一週間は本当に暑い日が続きました。

 

 そんな暑い日の最中、その出会いは突然起こりました。

 

 「コンニチハ」

 

 私がスタッフルームで休憩している時、玄関の扉が開く音とともに声が聞こえてその後仕事をしていた妻からの「ヒロミさーん」という呼び出し声で、慌ててフロアに出てきました。

 

 声の主は20代の女性でした。

 

 女性は手にスマートフォンを握りしめて額に大量の汗をかいていました。

 

 「はい。どうなされましたか。」

 

 舌先に感じる未だ口の中で歯の裏側にしつこくへばり付いてるチリメン雑魚を気にしながらも笑顔で対応する私に対して女性は「アァ・・・」と言いながら手に持つスマフォを弄りだしました。

 

 なんだ。と思い失礼ながらもスマートフォンの画面をチラ見すると、その女性が日本人ではないことが判明しました。

 

 女性は恐らく中国人でした。

 

 以前、こちらのブログでも何度か中国人に関わるお話を紹介したことがありますが、私の人生は本当に中国人と関わる出来事が多いようです。

 

 女性は何やらグーグル翻訳らしきソフトに向って一心不乱に漢字を打ち込んでいました。

 

 何か道でも聞きたいのかな、と思い、やや不安を感じながらも女性の行動を作ってしまった笑顔を崩せないままに直立不動で待っていました。

 

 3分ほど。

 

 長げぇなぁおい、と思いながらもその打ち込みが終わるまでお弁当の残りも食べられず、次のお客様の来店時間を気にしていると私の顔から笑顔は自然と消えていました。

 

 ようやく中国語を打ち終わった女性は私に画面を見るように「アァ・・・プリーズ」と言ってスマートフォンの画面を向けてきました。

 

 「私は携帯電話の電池が少ないです。私はあなたの携帯電話の充電を借りることが可能ですか。」

 

 画面には日本語でそう書かれていました。

 

 話は変わりますが、オーキニーを御陵でオープンして以来本当に多くのそう言った通行人がご来店されました。

 

 道を教えてほしい方は別ですが、お金を貸してほしい、トイレを貸してほしい、ライターを貸してほしい、水を飲ませて欲しい。

 

 最初のうちは人助けの為ならば、と快く承諾したりしていたのですが、トイレは使用後に汚されるわ水は紙コップを大量に使ってガボガボ飲まれるわライターは着きにくいと文句を言われるわでロクな目にあった事がありませんでした。

 

 お客様の迷惑になる可能性が高い、と言う事を知ってからはそういった方のご協力を断るようになりました。

 

 携帯(スマフォ)の充電器を貸してほしい。

 

 中国ではこういったことは当たり前なのでしょうが、言われた瞬間以前の伏見稲荷のスマイル事件やレゴランドでの出来事を思い出してしまい少し身構えてしまった私は色々なケースをシュミレートしてしまいました。

 

 ちょっとあつかましいんちゃうか。

 

 充電すると言う事は仮に電源とソケット(充電器)を貸してあげたとしても最低でも1時間ほどはオーキニーの電気に繋ぎっ放しにしないといけない。

 

 まず最初の問題はその間この女性はどうするというのか。

 

 店のソファーで待たれるとどうしても私の気がそちらに何%か向かってしまう。その結果お客様に失礼な雰囲気になる可能性が極めて高い。

 

 仮にコンセントに差して何処か外出されるとなってもその間に中国製の得体の知れないスマフォが店に置きっぱなしになってしまう。爆発とかする可能性が無いとも言えない。

 

 と言うかセコイですがスマフォの充電て電気かなり使用すると思うけどこの人分かってるのかな。

 

 そして何より手に持っているその翻訳の機能を果たしているスマフォも使えてるってことはまだ電池が切れてないって事ではあるまいか。

 

 食事中に急に呼び出されて3分間も放置プレイをされてややイラッときていたのもあり、それらを踏まえて私の中での選択肢は「NO」しかありませんでした。

 

 女性が持っていたスマフォが店にあるプラグのアンドロイド用ではなくIphoneだったので結局貸せない、と言う事もあったのですが。

 

 「ソーリー。アイドントハブユアスマートフォンズプラグ」

 

 合ってるか通じるか否かなんて関係なく顔の表情を申し訳ない感じにしてから両腕を交差させて×を作り、その後に掌を合わせてスミマセンというジェスチャーを作りました。

 

 恐らく英語もあまり分からない方だったと思いますが、何となく伝わったのか非常に困った顔をしだしたその女性は「オォ・・・」と言いながらスマートフォンの画面を又触りだしました。

 

 流石に女性の困った顔を見ているとなんだか申し訳ない気持ちになってきて、いてもたってもいられずにとりあえず店のすぐ近くにある交番を教えてあげることにしました。

 

 「ザッツウェイ・・・ゼア・・ポリボックス」

 

 なんでポリボックスやねん、と思いながらも何とか通じないかと英会話を続けていたのですがそもそも英語があまり伝わっていない様子だったので紙に地図等を書いて意思の疎通を図りました。

 

 しかし私の中に「警察行っても充電器なんて貸してくれよらへんかも。しかも御陵の交番ていっつも誰も出て来よらへんしアカンやん」という不安が大きくなってきてしまい、途中まで書いていた地図を丸めてごみ箱に捨てました。

 

 そして少し歩いたところにある郵便局の隣のパソコンショップなら、という考えに至りそちらを教えてあげることにしました。

 

 「ワンタイム。ポリボックス・・・はオイトイテ」

 

 両手で抱えていた荷物をその横の床に置いた風のジェスチャーをして店にあるノートパソコンを持ってきて女性に「パソコンショップイズゼァ。ショップハブスマートフォンソケット。」と江頭さんみたいなわけのわからないボディトークを繰り出しながら、それでも通じていなさそうな彼女にそこまでの地図とコンセントやニコニコ顔の店員さんと彼女の似顔絵を書いて渡しました。

 

 それを見て嬉しいんだかがっかりしてるのか分からない表情になった彼女。

 

 これでは拉致が明かない、と思った私は妻に「ちょっと行ってくるわ」と言い残し店の扉を開けて「レッツジョインミー」と昔の西田ひかるが出演していた英語教室のCMのような言葉を発して彼女をそこまで案内しようとしました。

 

 彼女は仕草でそれを拒み、又「アァ・・・」と言いながらスマートフォンを弄りだしました。

 

 又数分待たされて見せてくる画面をのぞき込むとそこには

 

 「私は私の自転車をこちら側に残していいですか。私は歩いてそこまで行くつもりです。」

 

 と言う文字が書かれていました。

 

 とりあえず少し話が通じたのが嬉しかった私は「オッケー。ビーケアフル。あそこねゼァ。あ、そ、こ。」と伝えて、彼女の自転車を店の横に駐車して行かれる事を許可してあげました。

 

 と言うか自転車乗ってたの。観光客違うんかいな。ていうか自転車なんで置いて行かはったんやろか。

 

 などと思いつつ取りあえず通常業務に戻ったのでした。

 

 「さっきの中国の人、パソコンショップの前でウロウロしてたけどひょっとしたら店閉まってたんじゃないの」と心配していた妻を他所に、さっき書いた彼女の似顔絵が腑に落ちなかった私は、もう一度紙と鉛筆を握りしめて記憶をもとに似顔絵再チャレンジに全神経を傾けていました。

 

 そしてその後、新たな不安が私を襲います。

 

 10分。20分。すぐ近くのはずなのに彼女は自転車の元へは一向に戻って来ません。

 

 「もしかしたら新手の詐欺か中国風の手口で、停めておいた自転車を元に何か言いがかりをつけてお金をせびって来るのではあるまいか。」

 

 停めておいた自転車がパンクしたとか無くなったとか、なんかこう美人局(つつもたせ)的な奴やったらどうしよう。

 

 1時間。2時間。そして気が付くと事件発生から4時間が経過していました。

 

 うっわ。これ完全にやられたマジかおい。

 

 簡単にこんな手口に引っかかってしまった自分の人間としての未熟さに後悔しました。

 

 妻に何となく謝らないといけないと思い「さっきの中国人の人、ごめんな俺の不注意や」と自分の頭の中にあった最悪の展開を説明しました。

 

 妻は黙ってそれを聞いてくれました。

 

 そして夕方。妻が帰宅しようと片付けをしていた時に不意に再びお店の扉が開きました。

 

 そこには先程の中国人の女性の姿がありました。

 

 うわ思ったより早い仕掛けや。と思いながらも取りあえずそばまで近寄っていく私。

 

 「アリガトウゴザイマシタ。」

 

 彼女は手に持っていた袋を私に渡して頭を何度も下げてそそくさと店を出て行ってしまいました。

 

 あれ何このビニール爆弾。中国人マフィアによる襲来は無いの。

 

 私はただ茫然と渡された爆弾が入っていると思われるビニール袋を手に立ち尽くしていました。

 

 気が付くと店の横に置いてあった自転車はなくなっていました。

 

 どうやら良く分かりませんが彼女は自転車を取りに気がてらお礼をしに戻ってきてくれた様子でした。

 

 時限爆弾のチチチと言う音などカケラもしないビニール袋の中身は「西尾の八つ橋」が入っていました。

 

 それを確認しながら、私はただ自分の犯した過ちを反省することしかできませんでした。

 

 情けない。なぜもっと人を信頼するところから始める事が出来ないのであろうか。

 

 固定観念、既成概念。すべては自分の心が決めているってあいだみつおさんも書いていたじゃないか。

 

 ここ数年自分の身の回りで起こった出来事で私はいつからか「中国人との接触は避けるべき」という気持ちになっていました。

 

 幼少のころ三国志を嫌と言うほど読み返しました。ジェットリーやジャッキーチェン、マイケルホイにどれだけお世話になった事でしょう。

 

 中国の皆さま今まで色眼鏡で見ていたことをお許しください。本当に申し訳ございませんでした。

 

 と言う事で私は今日からオーキニー日中友好条約を誓う事を皆様に宣言します。

 

 明日から月に一度は昔見ていた香港映画や横山光輝の三国志を見直し紹興酒を飲みシェイシェイとニーハオ以外の言葉を勉強したいと思います。

 

 よし。帰りにゲオ寄ってワンスアポンチャイナ久しぶりに借りて帰るか。

 

 冗談さておきこれからはもっと心を広く持っていきたいと思います。名も知らぬ中国人女性の方、色々と気付かせていただきまして本当にありがとうございました。

 

 

 劇終

一覧 TOP