選ばれし娘

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2016.02.23

 エクスペクトパトローナム(守護霊よ来たれ)。

 

 おはようございます。「今年一年は無駄な出費を出来得る限り控えて行こう」そう家族会議で決定した一家の主、斉藤です。

 

 文頭の何だか良く分からないカタカナですが、実はこれ「ハリーポッター」と言う映画に出てくる呪文の一種ですが皆様はご存知でしょうか。

 

 さて置き、先日家族でユニバーサルスタジオジャパンに遊びに行きました。

 

 事前に色々と調べたり計画するのが大好きな私ですが、今回は殆ど下調べなしで遊びに行きました。

 

 と言うのも今年は無駄な出費を控えるために、という名目で家族分のUSJ年間パスポートという「1年間USJに自由に行けるチケット」を購入したからです。

 

 私的には「色々な場所に旅行に行くよりは安上がりになるはず」そう思い先に1年分の支払いを済ませた感じでした。

 

 と言う事で当日、車でUSJの駐車場に朝7時過ぎに到着しました。

 

 朝早くから既に4~500人の行列が出来ていました。

 

 入場後、別段焦る事無く色々と見回ってから、妻の絶っての願いでパーク内になる「ハリーポッターエリア」に向かいました。

 

 日曜日と言う事もあって中は大混雑。乗れたらいいなぁと思っていた子供向きのジェットコースターでもすで待ち時間の表示は80分とされていました。

 

 「いつでも来れるし今度乗ったらええやん」

 

 乗りたがる娘にその呪文を合言葉にしながら先へと進みました。

 

 途中途中のお土産屋さんを通るたびに娘が色々と買おうとします。

 

 「いつでも来れるし今度買ったらええやん」

 

 買いたがる娘にその呪文を合言葉にしながら出来るだけ出費を控えようと努力する今年は堅実な私。

 

 しばらく歩いていると何やら何かを待っている列がありました。

 

 その先頭には「待ち時間25分」と書かれた看板が立っていました

 

 看板付近にいた魔法使いの様な格好をしたお姉さんに「何の行列か」と尋ねた所「オリバンダーの店に入る為の列」との事でした。

 

 

 オリバンダーオリバンダー。なんか聞いた事のある名前だな。

 

 確かハリーポッターの映画に出てきたような気がする。

 

 正直、良く分かっていませんでしたが店に入るだけで列になると言う事はよっぽど人気の店なんだな。別に何も買わなくてもエエし何となく25分なら待てる気がして取り敢えず最後尾に並ぼうと提案する私。

 

 10分位待っているとお店の扉が開き、薄暗く狭い室内に2~30人で閉じ込められました。

 

 密室の中、しばらくして係の人が「今からオリバンダーの店に入店します。ちょっとしたショーがありますので。その後ご自分に合った魔法使いの杖を探してください」とかなんとかいいながら、本棚の裏の隠し扉を開いてくれました。

 

 皆「おぉ」っと歓声を上げていましたが、そんなにビックリするほどの仕掛けじゃありませんでした。

 

 そうかここは杖屋さんだ。

 

 杖が大量に陳列かれた更に内側の室内は薄暗く、狭い古本屋の様な感じで3歳の息子を不安にさせるのには十分な雰囲気を醸し出していました。

 

 しばらくして髭を生やした外人さん(役者さん)が登場。説明(ショー)を始めました。

 

 ウェェルカムほにゃららオリバンダー。ヨウコソオリバンダーノオミセヘ。

 

 この瞬間。何となく大昔に見たハリーポッターの映画のワンシーンを思い出せました。

 

 教会式の神父さんの様な片言の日本語を聞いているとどうやら今から誰かが選抜。そして杖を選ぶのではなく、杖に人を選ばさせるとの事でした。

 

 ああ。あったなそう言う設定。

 

 と言う事で急に参列者を神妙な顔で見て回る外人さん。

 

 外人さんは一通り品定めをした後、斉藤家の長女である娘を選びました。

 

 困惑する娘はみなの前で余りにも外人さんに顔を近づけて説明されたので途中でポケットからマスクを取り出して装着していました。

 

 棚から長細い箱を取り出して娘に何か魔法を使わせようとする外人さん。

 

 「アソコニムカッテ、コウジュモンヲトナエテクダサイ「アガメンティ」。」

 

 変な杖を握らされ、外人さんが何と言ったのか分からなかった娘は不安度マックスな顔をしながら私に助けを求めてきました。

 

 「アガメンティやアガメンティ。」

 

 他の人に聞こえないように助け船を囁く私。それを聞いた娘は「頑張るわ」と言ってから外人さんの横に戻って上の棚の方の花瓶に向かって杖を振りながら呪文を唱えました。

 

 「アカノンディ。」

 

 いや違うがな。そう心の中で突っ込みながら頭上にある花瓶を見てみると、やはり娘が呪文を間違ったせいでさされていた花が枯れてしまいました。

 

 しかし心優しい外人さんはその事には一切触れずに「コレハァツエガアッテイマセンデシタネェ。」と言って娘ではなく杖の所為にしてかばってくれていました。

 

 その後「オオゥ。コレニマチガイナイ」と言いながらサラマンダーと言う素材で出来た(らしい)杖を選んでくれて再び娘に手渡していました。

 

 その後、その杖がどうやら娘にピッタリだった様子で、瞬く間に器用に杖を使って鐘を鳴らしたり部屋の電気を付ける魔法を習得してしまった娘。

 

 恥ずかしがりながらもとても嬉しそうな顔をしていました。

 

 すると最後に外人さんが娘にこう言いました。

 

 「コノツエハ、シオリチャン。アナタノモノデス。」

 

 え。何アレもらえるの。

 

 そう言って妻と顔を見合して夫婦で「特したね」と喜んでいました。

 

 「良かったねしーちゃん」と娘に声を掛けると「うん。ウチこれ大切にするわ。」と涙を浮かべて満面の笑顔を私達夫婦に見せてくれました。

 

 その後薄暗い部屋から退出を促され、明るい店内に移動した一瞬で文字(キャッチコピー)どおり世界最高に幸せ一杯な家族になれた私達。

 

 移動するや否や、制服を着た店員さんが駆けつけてきました。

 

 「おめでとうございます。杖に選ばれたんですね。」

 

 少し申し訳ない気持ちもあったので、謙遜しながら受け答えをしていた私に店員さんから瓢箪(ひょうたん)から独楽(こま)な話が飛び出しました。

 

 「選ばれたこの杖を特別にご購入して頂く事が出来ます。」

 

 え。何金とんの。

 

 一気に気分が沈んでしまい恐る恐る「いくらですか」と聞いてみると笑顔の店員さんはこう答えてくれました。

 

 「3800円です。」

 

 高っ。

 

 これは返そう。いや返さんとアカン。今年は節約しようって決めたばっかりやのに。

 

 そう思って娘に伝えようとしたのですが、既にプレゼントされた(と思っていた)杖の箱をとても大切そうに両腕で抱きかかえている娘の姿を見ると流石にそんな残酷な事実は伝えれられない事を悟りました。

 

 ・・・・しょうがない買うか。

 

 妻と何ともやりきれない気持ちでレジに向かいました。

 

 「まあ。特別価格って言ってたから普通に買うより安いし記念になるやろ。」

 

 そう言いながら会計を待っていると前のお客さんのお会計が終わりました。

 

 「一体普通に買うと幾らすんにゃろ」と思いレジに表示されている数字に何気なく目をやりました。

 

 そこには「1200」という数字が表示されていました。

 

 ・・・・・

 

 どう考えても5000円出した時のお釣りやんコレ。

 

 と言う事で判明。通常価格3800円。

 

 いっこも特してへん。

 

 

 その後、休憩の度に杖を取り出しては「これウチの杖ぇ。学校でみんなに言うねん。うふ。」と嬉しそうに間違った呪文を唱えながら振り回す娘に「花瓶に当たったら又枯れてしまうから辞めとけ」と注意しながら、何度も「これが3800円か」と娘とは逆にドンドン悲しい気持ちになっていく私。

 

 

 何となく娘が唱えた呪文(アガメンティ)の事を思い出してWikiで調べてみました。

 

 Wiki先生「アグアメンティ(Aguamenti)(水よ/水増し)

 杖の先から水を噴出させる。反対呪文は「インセンディオ」。」

 

 なるほど納得の「水増し」。

 

 これ間違って唱えたんじゃしょうがない。

 

 禁呪にも匹敵する恐るべし呪文アガメンティに「やるなぁUSJ」と妙に納得させられた私。

 

 皆様もUSJに遊びに行かれる際には世界最高の家族になる為にもくれぐれもこの「オリバンダー商法」にご注意ください。

 

 因みに家に帰って来てからそのサラマンダーで作られた杖は一切陽の目を見ていません。

 

 

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